チャーチルが現代を切る

20世紀の英宰相ウィンストン・チャーチルの思想から現代内外情勢を評す

気象庁と噴火予知連は、情報が誤りであっても登山者に確実に知らせるべきだった     御嶽山噴火の惨事

チャーチルからのメッセージ   変化の時代を生きる

 27日に噴火した御嶽山は最悪の結末を迎えた。12人が死亡し、心肺停止は24人。事実上、少なくとも36人が亡くなった。何の罪もない登山者の死。ご遺族の気持ちを思うといたたまれない。ご冥福を祈ります。
 御嶽山の噴火後、噴火予知連絡会の藤井敏嗣・東大名誉教授は「今回の噴火の規模では予知することは難しかった」と述べた。確かに自然の変化を予測するのは難しい。ただ、そうであっても、ほんの少しでも変化が探知されれば、気象庁や予知連は地方自治体にその情報を流し、自治体は登山者に知らせることはできたはずだ。事実、「解説情報」として自治体や御嶽山の山小屋にまでは伝わっていたという。
 各紙の報道を総合すれば、御嶽山では、今月10日に火山性の地震が52回、11日に85回観測された。10日以前の状態と極めて異質の地震振動だったという。この火山性の地震はいずれもA型。火山は、噴火の前兆として、地震が増えることが多い。A型は地下でマグマが上昇する時、岩盤が壊れて起きる地震だという。
 地震の総数は12日以降に減少したが、14日に2回の「B型」と呼ばれる低周波の地震が発生し、26日までに計13回を記録した。B型は、浅い地下で水や火山ガスなどが動いて起きる地震。地下の水蒸気やガスが増えて圧力が上昇したことの目安となる地震で、火山特有の波形を持ち、水蒸気爆発の前に増える傾向がある。
 ただ気象庁は、A型の地震については震源の深さに大きな変化がなく、B型の回数も少なかったため、噴火警戒レベルの引き上げを見送っていた。
 10,11日の地震はいずれも低周波。「噴火の予測は難しい」と述べた藤井会長は記者会見で「これ(低周波地震)が出始めたら、(噴火と)関係しているかもしれないと思って注目する一つの指標になり得る」とも話している。
 27日の噴火から、毎日伝えられるニュース報道を聞いていると、地震予知連や気象庁は「白黒」的な判断を恐れた節がある。10日以降の火山活動の変化を根拠にして「噴火の可能性がある」と予測して、「もし噴火しなかったら責任を問われかねない」。そう考えたようだ。
 日本人の国民性を考えれば、気象庁や噴火予知連の幹部の気持ちを理解できる。間違っていれば、「人騒がせな気象庁」とメディアに叩かれる可能性はある。専門家の最終結論に依存しやすく、気象庁から送られてくる「情報」を自分で考え判断する傾向が少ない多くの日本人。独立心があまりないため、「お前の判断は外れたではないか」と非難しないまでも、「いい加減にしてよ。紅葉を見に行きそびれた」と文句を言われ、気象庁に「文句」の電話が殺到する可能性は十分にある。
 気象庁や噴火予知連の予報官は、それでも、情報を一般の登山者にも分かるようにすべきだった。もちろん、そのような伝達整備をしていなかった自治体、今回の場合は、岐阜県と長野県も反省しなければならない。
 われわれも、「外れた。当たった」ということではなく、「一つの重要な情報」として受け入れ、われわれがその情報に基づいて判断しなければならない。そして判断したからには、その判断に責任を持ち、誰に対しても批判しないことだ。
 もし、10日以降の情報が確実に観光客や登山者に流れていれば、死者数は減っていたと思う。自ら判断して御嶽山登山を控えた登山者もいたはずだからだ。最後の判断は予知連や気象庁ではなく、各個人である。
 今回の反省として、気象庁、噴火予知連、地方自治体はどんな小さな情報でも確実に登山者に伝える伝達手段を構築してほしい。そして、その情報を手に入れた登山者は独立心を持ち、責任をもって判断し行動する。このことが尊い命を落とされた方々への供養になるし、過去と現在の反省を未来に生かす道ではないだろうか。